緊急事態宣言(2021年1月~)に伴う西湘動物病院の対応について
2021.1.18 -[大事なお知らせ]
まずは当院の患者様におかれましては、日頃より受診時のマスク装着や手指消毒をはじめとした新型コロナウイルス感染防御対策にご協力いただきましてありがとうございます。
また、完全予約制をはじめとしたシステム変更や新たなルールの導入などによりご不便おかけしておりますことをお詫びいたします。
1/8から1都3県を対象に再度緊急事態宣言が発出され、その後も対象が拡げられているのはご存知の通りかと思います。
考えをまとめたり、言葉を選ぶのに時間がかかってしまいましたが、遅ればせながら当院の対応を発表いたします。
昨年の春の時点では全く未知なる病原体だった新型コロナウイルスも、さすがにこれだけ長く付き合ってきて、だいぶ相手の特徴がわかってきています。これまでと同じ対策を繰り返せば犠牲になるものの大きさも見えてきました。
国内の世論は感染制御優先論と経済活動優先論と大きく二分している様相です。
☞新型コロナ みんなの考えは?(朝日新聞社の世論調査)
今回の宣言は、飲食をはじめとした飛沫感染リスクの高い(と言われている)場面を徹底的に切り取った方針なのかもしれませんが、感染制御派と経済活動派のいずれの立場から見ても中途半端に映ってしまっています。
「出勤者数の7割削減」「20時以降の外出自粛」などの言葉はあるものの、昨年春のときの社会経済活動を根こそぎ止めるレベルと比べれば、一斉休校はもちろん、「人との接触8割(7割)減」までは求められない、ゆるゆるの内容です(それでも飲食業をはじめ大変キツい業種業態があるのは間違いないですが)。
個人的にはこれが政府からのメッセージだと受け止めています。
ファクターXも加味した日本の現状では、それでも徹底した感染防御よりどちらかと言えば経済優先ということなのではないでしょうか。
ただし世界各国を見回しても、やはり感染制御なくして経済回復も難しいようで、みんな本当に頭を悩ませていると思います。
緊急事態宣言の前提として最も大きな問題とされているのは、新型コロナウイルス陽性者に対する医療提供体制の逼迫です。
せっかくここまで欧米に比べれば被害も少なく時間稼ぎをしてきたにもかかわらず、当初から容易に予想された冬の流行に対する医療体制の備えが全く足りていなかったという信じられないほどお粗末な結果と言えると思います。もちろんこれは医療従事者の責任では全くなく、政治の責任という意味であり、医療の現場の皆様のご尽力にはただただ尊敬と感謝あるのみです。そういう政府を間接的にでも選んでしまったのは他ならぬ有権者たる我々なので仕方ないと言えば仕方ないのかもしれません。
こんな現状で医療崩壊とか言われても、そもそも医療システムがどうだの、指定感染症の扱いがどうだの、いろいろと問題点が指摘されていて、自粛なんて従ってらんねー、となるのもわかりますが、この結果と現実から目をそらしても何も解決しないので、より良い対応システムが構築されるまで、ここはまた徹底的な時間稼ぎをするしかないということなのでしょう。
しかし本気で感染拡大を食い止めるには今回の緊急事態宣言は中途半端で効果が出ないだろう、という意見にも納得なのですが、そもそもギリギリまで経済とのバランスを考えたうえで、最低限医療崩壊に陥らない程度の時間稼ぎができれば十分という考えなのではないでしょうか。
はたから見て、民間病院や政治家たちにはまだやれることがたくさん温存されているはずなので、今後そのあたりのカードが切られ始めることを想定すれば、医療崩壊という最悪のシナリオまではひょっとするとまだ余裕があるのかもしれません(そうあってもらいたいです)。
遅すぎるとは思いますが、ここへきて水際対策を強化したり、東京都がコロナ専門病院への集約化を始めた(大阪のときのように専門病院従事者が大量離職することを防ぐための施策も同時に考えないといけませんが)のは良い流れには違いありません。
さて、前置きが長くなりましたが、西湘動物病院としてどうするか。
まず大前提として、動物病院業界は昨年春の緊急事態宣言のときから「不要不急枠」ではないとお墨付きを頂いております。
我々の立場からすれば動物の命が「不要不急」で片づけられないのは当然ですが、これが社会的に認められたということであり、ありがたく感じると同時に身の引き締まる思いです。
☞緊急事態宣言(2020)下の西湘動物病院の対応について
それでも昨年の緊急事態宣言下では、未知なる病原体を相手に動物病院クラスターを発生させることだけは避けなくてはならないという妙な使命感のもと、患者様にも受診を控えてもらう働きかけをするなど厳しめに対応してきました。
しかし、その後1年弱が過ぎた今、改めて動物病院業界を見渡しても、心配していたクラスター発生の話題は数える程度でしたし(表沙汰になってないだけではないことを祈りたいです)、動物を介した感染の話題も聞こえてきません。
動物病院は、そこそこ適切な対策を講じている限り、決して感染リスクが高い場所とは考えなくて良いと言えそうです。
そしてwithコロナに対する私個人的な考え方(緊急事態宣言前)としては以下の通りです。
【基礎疾患を有さない40代(~50代)ぐらいまでの日本人】にとってはこの感染症が重症化するリスクは低そうです。
・無症状ならマスク装着と手指衛生を徹底しつつ通常に近い経済社会活動を行う。ただし高齢者や基礎疾患を有する方との濃厚接触は可能な限り避けなければならない。
・もし体調が悪くなったときには自分がコロナウイルスを排出しているかもしれないという前提に立って行動する必要があり、学校や職場は回復するまで躊躇せず休む(職場ではお互い様で文句言わずにサポートする)。
・症状が軽ければ病院を受診せず自宅療養で治す。
・症状が強ければまずはオンライン診療の受診を考える。PCR検査を受けるかどうかはお医者さんの判断に従い、無理にお願いしない。症状次第では対面診療、あるいは検査結果次第では入院が必要になることもあるかもしれません。
・可能であれば自宅等で血中酸素飽和度を測定して(市販されています ☞パルスオキシメーターランキング)低下がみられた場合や症状が非常に強い場合は緊急と判断して病院や都道府県の窓口に相談する。
☞入院できないコロナ自宅療養者が急増 重症化を察知するパルスオキシメーターは必須アイテムだ
逆に、【基礎疾患を有する方や高齢者、特に80歳以上の方】は、より慎重になるべきであることは間違いありません。
経済うんぬんを気にしている場合ではなく、自分自身の命を守るための行動を優先する必要があるでしょう。
ただしそれも個々の人生観や考え方次第ではあると思うので、自分が許容できる範囲のリスクをとった行動をすればよいとは思いますが、自身が感染した場合には重症化して医療逼迫さらには医療崩壊の原因になる可能性が比較的高いことを自ら理解して行動することが求められるのではないでしょうか。
・医療提供体制が潤沢でない場合には他人との接触を伴う不要不急の外出は自粛する。
・必ずしも家に引きこもる必要はなく、あくまで感染リスクの高い行動を取らないように注意しつつ適度な外出や運動を心がける。
・もし体調が悪くなった場合には即緊急と判断して病院や都道府県の窓口に相談する。
・体調が悪くなくても可能であれば自宅等で日頃から血中酸素飽和度を測定(市販されています ☞パルスオキシメーターランキング)して、低下がみられた場合は病院や都道府県の窓口に相談する。
そんなところでしょうか。あくまで一般市民による個人的な意見です。
うーん、なかなか本題に入れませんが、いよいよ
緊急事態宣言を受けて、西湘動物病院として具体的にどうするか。
上記のような現状と個人的な意見を踏まえつつ、動物病院の果たすべき役割を考え、
病院サイドとしてはほぼこれまで通り診療を継続します。
そのうえで、これはほとんど緊急事態宣言前から実施している内容ですが、改めて以下の措置を取ることをお知らせします。
・スタッフは体温測定など体調管理に努め(毎日の体温測定結果の報告を義務化しています)、マスク装着と手指衛生を徹底する。
・スタッフの休憩室内で同室する人数を制限するとともに、やむを得ず同室する場合で、特に昼食時などマスクを外さざるを得ないシーンでは必ず1m以上の距離を保つ。
・体調不良のスタッフは出勤させない。(日本産業衛生学会/日本渡航医学会のガイドラインに従って、持続的な発熱や風邪症状を呈した従業員について「発症から8日経過、症状消失から3日経過」するまで休ませることを規定し、さらに新型コロナ特別休暇制度を設け、有給で休みやすい環境整備をしています。加えて、従業員に解雇その他の労務上の不利益な扱いを受けないことを約束し、該当の従業員に対して他の従業員が差別的な扱いをすることを禁止しています)
・来院される飼い主様の体調把握に努め、来院時のマスク装着と手指消毒を徹底して頂く。
・体調不良の飼い主様には来院を控えて頂き(該当の飼い主様に対する差別的な扱いをすることを従業員に禁止しています)、代理の方による受診もしくはオンライン診療の受診を推奨する。(当院ではオンライン診療を既に稼働させています)
・ご高齢もしくは基礎疾患を有する飼い主様には来院を控えるよう勧告する。やむを得ず受診する場合には極力来院頻度が減るよう診療や処方を工夫する。
・診察室が密室とならないよう留意するとともに常に換気を行い、原則として人と人とは1m以上の距離を保ち、15分以上の同室を避ける。
・事前オンライン問診の活用などにより、診察室内での会話は必要最低限に控え、特に結果説明など比較的長時間の会話が必要な場合にはリモートによる実施をお勧めする。(必要なタブレットなどの貸し出しとフリーwifiのご利用が可能です)
・待合室は常に換気を行い、座席数を削減して飼い主様どうしが密接しないよう配慮するとともに、原則としてお車や院外での待機を推奨し、院内での滞在時間が最低限となるように促す。
・院内外の高頻度接触部位について定期的な消毒を行う。
などなど、今となってはあたりまえの内容も含め、対策を挙げればキリが無いですが、特記的な部分について触れました。
マスクや手指衛生、3密回避などはもはや当たり前となった今ですが、意外と難しいのは
・体調不良のスタッフは出勤させない。
・体調不良の飼い主様には来院を控えて頂く。
こういった部分だと思っています。
ごくあたりまえのことのようでいて、改めて考えてみると意外と条件を整えないと達成できないことに気づかされます。
当院ではそこを整えました。
最後に、政府と神奈川県知事には申し訳ないですが、外来を継続する限り、要請されている「出勤者数の7割削減」は業態から考えれば無理と言わざるを得ません。
ただし、スタッフの時差通勤は考慮し、現在最適な時間帯を模索中です。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行が一刻も早く収束すること、
そしてこの騒動により動物たちが不利益を被らないことを祈ります。
院長