西湘動物病院(神奈川県中郡二宮町の動物病院)

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緊急事態宣言(2021年8月~神奈川)に伴う診療制限について

2021.9.1 -[お知らせ]

誰かが言っていた「オオカミ少年」の例えが非常にしっくり来たのでそれにならって書きます。

これまでも医療崩壊するぞするぞと言い続け、飲食店イジメに近いような経済の犠牲を伴う緊急事態宣言やまん防を繰り返し発出してきた政府(もしくは分科会)でしたが、
ファクターXに守られていた私たち日本人にとって、新型コロナは実はそれほど怖いオオカミではありませんでした(過去形)。
(こう書くと医療従事者の方々には怒られてしまうかもしれませんが、欧米と比べて相対的に、という意味です)
当院でも、ウイルスの特徴がまだハッキリしていなかった初期段階こそかなり慎重な姿勢で対応したものの、その後は段階的に制限を弱めて、感染防御に気を配りながらほぼ通常時に近い営業(診療)を続けてきました。

しかし今、想定された展開ではありましたが、世界的に爆発的な流行が続く中で次々と変異株が出現し、ついに日本やアジアにおけるファクターXは乗り越えられてしまったようです。
☞ ウイルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫応答から免れるSARS-CoV-2変異の発見

こうなると、今のデルタ株中心の新型コロナウイルスの流行は「本物のオオカミが来た」状態と言えるかもしれません。
ただ、残念ながらこれまでの(嘘とまでは言いませんが)「オオカミが来た」宣言と、拍子抜けするような「さざ波」の繰り返しに慣れてしまったことで、政府の言うことに聞く耳を持つ国民はかなり減ってしまいました。
それでもワクチンが高齢者に行き渡るのが間に合ったのはせめてもの救いだったと思います。

私もすっかりオオカミ少年に騙されてしまっていましたが、
流行開始当初の新型コロナウイルスとは全く別物と言っても良い今の変異ウイルスに対して気を引き締め直し、
初心(「不要不急」とか「3密」とかの文言が流行り始めたあの頃)を思い出して、

西湘動物病院ではスタッフと飼い主様のお互いの安全のために診療制限を行うことにしました。
(実効再生産数が1を切って既にピークアウト傾向が見られてきた今頃になって、かなり遅ればせながらですが・・・)

具体的には以下の内容でのご来院をしばらくお断りさせて頂きます。

・爪切りや耳掃除、肛門腺絞りなどのケアのみ
・狂犬病予防接種のみ
・3年目以降の混合ワクチンのみ(子犬子猫と2年目のワクチンは特に大切なので受け入れ可)
・ペットホテル
・県外からの初診 など

健康な動物の不急のご用件は少なくとも緊急事態宣言解除予定の9/12(たぶん延長だろうな~)まではご遠慮願います。

10/4追記:緊急事態宣言の解除とともに10/1から診療制限を解除しています!

 

ここから先はおまけの話です。
私個人的には、ある日どこからか流れてきたこのイラストを見て

「なるほど確かに甘く見ていた。『重症化』しなければ良いというのは違うな」と思ったのに加え、
さらに先日、ファクターXが期待できなくなったことを知ったことで、気を引き締め直した次第です。

 
そう考えると、「死亡者数」や「重症者数」ももちろん大事ですが、個人的にはむしろ医療逼迫、医療崩壊の動向を見極める鍵となるのは「中等症者数」じゃないかと考えています。
なので、「感染者(陽性者)数」に対して「中等症者数」がどの程度の割合を占めるのか、年齢の分布はどうなのか、データをもとに判断したいところなのですが、残念なことに探してもなかなか見つかりません。

入院患者に占める中等症者数はわかるのですが・・・(画像は神奈川県HPより引用)

今は中等症でも自宅療養を余儀なくされている方が少なくないわけですし、そもそも重症寄りの中等症Ⅱ(呼吸不全あり)とそこまでではない中等症Ⅰ(呼吸不全なし)を一括りにしてしまうと全体像がつかめません。
さらに、無症状と軽症は「感染を自覚する」上で大きな違いなので、これを一括で計上するのもどうかと思います。
初期段階から「正しく恐れよ」とは言われてきましたが、適切な情報が十分に公開されていないので、「正しく」の判断が本当に難しいと感じます。

 

さて、我々小動物臨床獣医師が「コロナウイルス」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは、既にワクチンが普及する犬コロナウイルスではなく、少し前まで不治の病とされていた猫伝染性腹膜炎(FIP)の原因となる猫コロナウイルスでしょう。
そしてFIPには未だに有効なワクチンがなく、その原因の一つとしてADE(Antibody-Dependent Enhancement:抗体依存性感染増強)がみられるから、ということも我々はよく知っています。
予防を目的とするワクチンで体内に抗体が作られると、逆にウイルスの細胞への感染を助長してしまうという現象です。
(そもそもFIPの発症防止には液性免疫(≒抗体)よりも細胞性免疫が重要だとされています)

なので、私個人的には新型コロナワクチンのデメリットを考えた時に、それは急性の副反応として一般的な発熱や痛みでもなく、不妊の心配でもなく、(ごくまれにみられる死亡事故は恐ろしいとは思うものの)一番の懸念点は長期的に本当にADEを起こさないかどうかでした。

このADE、人間の新型コロナワクチンの開発過程でも注視してきたそうですが、十分量の抗体が産生される限り理論的には大丈夫なはずだしその報告はないからワクチンは問題ないとされてきました。
しかし、実際には自然感染におけるADEの証拠が報告されてしまったうえに(☞新型コロナウイルスの感染を増強する抗体を発見―COVID-19の重症化に関与する可能性―)、
有識者の口からも、ひょっとしたらワクチンの接種後の抗体が減ってきた頃にADEが起こる可能性はゼロではない、みたいな論調になっているようです。

それを踏まえると、イスラエルを先頭に、ワクチン接種から数か月以上が経過した国で、今になって爆発的な再流行がみられているのは気がかりです。

しかし、ADEの可能性が怖いからワクチン打たないという結論は賢明ではなく、これはもう個人レベルで接種するしないの問題ではなくなっていますし、
少なくとも今のところワクチンによる重症化防止効果はメリットとして期待して間違いなさそうです。
思いのほかワクチンの効果が落ちるのが早かったので、今後何回接種すれば良いのやら予測がつきませんが。
(その都度ロシアンルーレットのような死亡事故も恐れないといけないわけで・・・)

かなり驚いたのはカナダのワクチン買い占め問題で、早い段階からブースター接種を予想していたのか一体何なのか、当初は人口3800万人に対して3億回分以上のワクチンを確保したとか言っているのを聞いて、いやいやいや、ひとり何回接種するつもりだよ、と思ったものです。
でも、イスラエルをはじめとしたワクチン先行国の現状を見ると、本当に何回接種してもキリがない状況になるかもしれません。

ワクチンを打つも地獄、打たぬも地獄、みたいな様相になってしまいましたが、この状況を打破するためには、
もはやいつまでもワクチンに期待するのではなく、治療薬の登場に期待するのが正しいと思います。
治療薬が出てくるまでの時間稼ぎとしてワクチンで重症化を防ぎ続けるという戦略になるでしょうか。
特に、点滴投与が必要な「抗体カクテル療法」よりもさらに気軽に使える「内服薬」が欲しいところです。

ずっと前から期待していたメルクの「モルヌピラビル」の治験の結果はイマイチだったという噂を聞きましたがどうなるでしょうか。
☞ MSD日本法人、コロナ治療薬の最終治験開始、自宅療養に“ゲームチェンジャー”

さらに、モルヌピラビルと同じくヌクレオシドアナログ製剤で、猫のコロナウイルス性疾患「FIP(猫伝染性腹膜炎)」の特効薬とされているギリアドの「GS-441524」。これが人間の新型コロナに内服で効くだろうとする証拠が揃い始めています。
なにより当院でも猫のコロナに使用経験があり、その劇的な効果を目の当たりにしている点で、高く信頼しています。
いろいろ大人の事情があるようで、この薬が広く承認に向かうかと言ったらかなり微妙ではあるようですが。

我らが塩野義のプロテアーゼ阻害薬「S-217622」もある程度の期待ができそうではあるのですが・・・
猫のFIPでもGC-376というプロテアーゼ阻害薬の治験がアメリカで進んでいるものの、GS-441524の効果には遠く及ばないというのが我々の共通認識ですので、塩野義にもあまり期待していないです。

最後に、私はイベルメクチンには懐疑的ですが、あんな薬(と言ったら失礼ですが)で本当に効果があるなら喜ばしいことだとは思います。

 

ともかく一日も早いコロナ騒動の収束を祈ります。

院長

 

 

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