西湘動物病院(神奈川県中郡二宮町の動物病院)

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猫の「黒いかさぶた・イボ」は癌?ボーエン様表皮内癌(ボーエン病)の症状と治療法

2026.8.9 -[病気や治療について]

愛猫のからだを撫でているときに、「なんだか黒くて硬いかさぶたがある」「ざらざらした小さなイボがいくつもできている」と気づいたことはありませんか?当院でも、特に10歳を超える高齢の猫ちゃんを中心に、こうした皮膚の異常でご相談いただく機会があります。単なる傷のかさぶたや皮膚炎だと思って様子を見てしまいがちですが、実は「ボーエン様表皮内癌(ボーエン病)」という皮膚の早期がん(多発性表皮内扁平上皮癌)である可能性があります(※獣医学領域ではヒトのボーエン病とは特徴がやや異なるため、「ボーエン病」ではなく「ボーエン様表皮内癌」と呼ぶのが適切と考えています)

病気・リスクの解説と「正しく恐れる」ための視点

猫のボーエン様表皮内癌は、皮膚の一番外側にある「表皮」の中に腫瘍細胞がとどまっている段階の悪性腫瘍です。一般的な猫の扁平上皮癌は太陽光線(紫外線)の暴露や白い毛(色素の薄さ)がリスク因子とされますが、ボーエン様表皮内癌は紫外線や毛色との関連はなく、主にパピローマウイルス感染や加齢に伴う免疫力の低下が発症に関与していると考えられています。

体幹(背中や腹部)、四肢、頭部などに、黒っぽい色素沈着を伴うカサカサしたかさぶたや、出血しやすい赤い盛り上がり(局面)が複数できる(多発性)のが大きな特徴です。基本的には表皮内にとどまるため、この段階で他の臓器へ飛ぶ(遠隔転移する)可能性は極めて低いとされています。しかし、放置してしまうと基底膜(皮膚の深い層)を越えて侵入し、進行した「浸潤性扁平上皮癌」へ進展してしまうケース(平均17%程度という報告あり)もあります。むやみにパニックになる必要はありませんが、「表皮内にとどまっている段階で正しく診断し、悪化させないよう適切に管理していく」という視点がとても大切です。

動物病院から飼い主様へのお願い・家庭でできる対策

日頃の丁寧なスキンシップや観察の中で、ぜひ以下のポイントを意識してみてください。

  • 撫でるときに全身の皮膚に指を入れ、黒く硬いかさぶたやざらつき、イボ状の盛り上がりがないか確認する
  • 気になるかさぶたを見つけても無理に剥がそうとせず、形・大きさ・数の変化をスマホなどの写真で記録しておく
  • 高齢期や持病(FIV/FeLV感染など)のある猫ちゃんは免疫力が低下しやすいため、定期的な健康チェックを心がける
  • 治りにくいかさぶたや、出血・自壊を伴う変化が見られたら、自己判断で塗り薬を塗らずに早めに動物病院を受診する

よくある質問(Q&A)

Q1. 猫のボーエン様表皮内癌(ボーエン病)とはどのような病気ですか?一般的な皮膚炎や日光による扁平上皮癌とどう違いますか?

A. 皮膚の一番外側(表皮)にがん細胞がとどまっている状態の早期皮膚がんです。 一般的な皮膚炎と異なり消炎剤などでは治らず、太陽光線(紫外線)とは関係なく全身のさまざまな場所に「黒っぽく硬いかさぶた」などが多発する特徴があります。

Q2. 猫のボーエン様表皮内癌(ボーエン病)はどのような治療を行いますか?手術が必要ですか?

A. 病変の数や猫ちゃんの全身状態に合わせて、外科手術、簡易的な処置、外用薬などを組み合わせて選択します。 単発または少数の病変であれば外科的切除(手術)が理想です。局所麻酔での手術が可能な場合もあります。高齢や持病で積極的な手術が難しい場合や多発している場合は、凍結療法やレーザー蒸散療法、免疫調整作用のある外用薬(イミキモドクリーム等)で治療することもあり、あるいは出血や潰瘍を抑える院内処置(モーズペースト変法など)や保護剤(亜鉛華デンプン・アルギン酸ナトリウム等)を用いた緩和的なケアを行います。

Q3. 治療後に再発したり、ほかの部位に広がったりすることはありますか?予後について教えてください。

A. ひとつの病変を治療しても、高い確率で別の部位に新しい病変が発生する傾向があります。 この病気自体で直接命に関わることは少ないですが、多発しやすい性質があるため、治療後も定期的に新しい病変ができていないか観察していく必要があります。万が一、皮膚の深い層へ進行した場合(浸潤性扁平上皮癌)は転移リスクが高まるため、注意深い経過観察が必要です。

当院での対応と適切な診断・治療の進め方

西湘動物病院では、見た目や触診だけで判断するのではなく、皮膚の細胞診や病理組織検査(病理生検)を通じて「ただの皮膚炎なのか、ボーエン様表皮内癌なのかそれとも他の主要なのか」を正確に診断いたします。また、高齢の猫ちゃんで多発している場合や、持病があって積極的な全身麻酔・手術が難しい場合でも決してあきらめる必要はありません。根治を目指す外科切除から、身体への負担を抑えたレーザー・凍結療法、特殊な外用薬(イミキモドクリーム)療法、特殊な処置薬(モーズペースト等)を用いた緩和ケアまで、ご家族のご希望や猫ちゃんの体調・全身状態に合わせた柔軟な治療プランをご提示いたします。

まとめ・ご相談

「歳をとってできたイボやかさぶただと思っていた」「かさぶたが取れてはまた出来てを繰り返している」といった変化も、早期に発見できれば身体への負担が少ない治療や緩和ケアを選択しやすくなります。二宮町、小田原市、大磯町、中井町など近隣にお住まいの飼い主様で、愛猫の皮膚に気になるかさぶたやしこりを見つけましたら、どうぞお気軽に当院までご相談ください。

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